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  • 執筆者の写真Sean Sato

人参嫌い



 函館の百貨店の物産展に出店している隣町の有機野菜農家のブース前を通ったら試飲の人参ジュースを勧められた。

『すみません。人参は嫌いなので。』と断ったが、余程自分の作った人参に自信があるのか、有無を言わせぬ仕草で試飲の人参が入った小さな紙カップを二度三度と差し出してくる。その自信の風圧に負け紙カップを手に取った。そして覚悟を決め、ぐいっと飲み込んだ。『あれ!これが人参か。フルーツではないか。これなら食べられる。』ようやく食べられる人参との出会いである。

品種を聞いたら、「京くれない」だと言う。早速、スマホで調べるとリコピンが従来人参の十倍以上ある機能性野菜であることが分かった。『健康にも良いのだ。』もう、これは買いだと、直ぐに財布を持って売場へと立ち戻り、店先にある十本を手に取り買い占めた。

人参嫌いは子供の頃に好物な物だけを食べていたからと言う説もある。また、子どもが野菜嫌いな理由が判明。生まれつき脳に情報がインプットされているからとの研究論文もある。ある調査によると男性の大人になっても食べられないと恥ずかしい野菜ランキングの一位はピーマン、二位はトマト、そして三位が人参となっている。上位二種は嫌いではない。何故、人参が駄目なのだろうか。

食べ物の好き嫌いは脳が判断している。過敏な舌、過去の食体験、意固地な性格などなどが美味しいと脳が情報処理せず、口に入れては危険と拒絶する。人参を食べられないことで困ることは、外食で無理に口に入れることであり、食べられる人参に出会ったことで妻の作る人参入り料理で悲しませることは無くなりそうである。


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